文章で表現するスナップ 「女たちは二度遊ぶ」吉田修一
- 2023/01/13
- 10:00

吉田修一さんの短編集「女たちは二度遊ぶ」を読みました。この中の一編がラジオドラマで放送されていてそれを聴いたのがこの本との出会いとなりました。全部で11の物語が収録されています。「どしゃぶりの女」「平日公休の女」「十一人目の女」「CMの女」「ゴシップ雑誌を読む女」とタイトルからして何だか独特で、どんな話なんだろうと興味をそそられます。そして実際に読んでみると、これが予想外の独自性をもつ物語たちでその...
家族について考えさせてくれる一篇 中江有里「水の月」
- 2022/06/13
- 18:00

中江有里さんの新刊「水の月」を読みました。月刊誌に連載されていたものが単行本化されたんですね。以前からSNSで中江さん自身も告知されていたので、楽しみにしてページを開きました。もうネットなどでも紹介されているので、あらすじは御存知の方も多いかも知れません。幼い頃に両親が離婚したために別々の人生を歩んでいた姉妹が、ふとしたきっかけでお互いの存在を知り、メールのやりとりをするようになります。この「水の月...
披露宴をめぐる多彩なドラマたち 中江有里「残りものには、過去がある」
- 2022/05/03
- 14:26

中江有里さんの書いた小説「残りものには、過去がある」を読みました。ひとつの結婚披露宴を舞台にしたオムニバス形式の短編集です。中江有里さんの作品を読むのは「万葉と沙羅」に続いて2作目です。「万葉と沙羅」は、本を通して二人の若い男女のドラマを描いた物語で、どちらかと言えばほんわかした穏やかムードの作品でした。でも、今回の「残りものには、過去がある」は男女の恋愛模様を中心に描かれていて、シリアスで心に刺...
もしもドイツが勝利していたら… 小説「NSA」
- 2022/04/05
- 18:31

アンドレアス・エシュバッハが書いた小説「NSA」を読みました。もし、第二次大戦時にドイツで携帯電話やインターネットが発達していたら…という設定の「歴史改変SF」です。そういう設定の小説ですから、「ドイツと他国との息詰まる情報戦略!」みたいなものかと読み始めたのですが、想像とは相当かけ離れたお話でした。物語は主に二人の人物を中心に書かれています。一人は、ヘレーネ・ボーデンカンプという女性のプログラムニッタ...
丁寧に描かれた青い春の心たち 中江有里「万葉と沙羅」
- 2021/11/06
- 10:00

中江有里さんの書いた小説「万葉と沙羅」を読んだ。出たばかりの新刊を読むのは久しぶりだ。ネットやラジオでも話題になっていたし、何より中江有里さんが書いた作品だというのですぐに読んだ。ところで中江有里さんというと皆さんはどういうイメージを持っているんだろうか。若い人たちは多分、コメンテーターの印象が強いかも知れない。本をよく読む人は小説家の、テレビをよく見る人は脚本家のイメージかも知れない。でも、デビ...
観客なし、笑顔なし、感動なし
- 2021/07/07
- 18:30
この状況で東京五輪を開催しようとしている正気とは思えない開催しないと赤字になると嘆く人が居るがだから何だと言うのか何と何をはかりにかけて議論しているのだろうか命を犠牲にしてまで損をしたくないというのだろうかアスリートたちが可哀想だと言う人が居るがむしろ開催する方が彼らにとって可哀想だこの大会でメダルを獲った選手たちは呪われた印を首にかけることになるもしもこのまま東京五輪が開催されたらそれは五輪史の...
ロッキーから次の世代へ 映画「クリード」
- 2021/05/28
- 18:00

「ロッキー」と聞いて、あのテーマソングがすぐに脳内再生される人はどのくらい居るんだろうか。今の20代、30代だとその数はかなり少ないかも知れませんね。無名のボクサーのサクセス・ストーリーもそれくらい過去のものになりました。映画「クリード チャンプを継ぐ男」と「クリード 炎の宿敵」は、そのロッキーのライバル、アポロ・クリードの息子アドニス・クリードがボクサーとして歩み始める姿を描いた作品です。アポロに息...
つづきのつづきがまた見たくなる 劇場版「奥様は、取り扱い注意」
- 2021/04/09
- 10:00

綾瀬はるかさん主演の映画「奥様は、取り扱い注意」を観ました。2017年にオンエアされたドラマ作品の続編です。この映画は2019年に撮影が行われ、2020年に公開予定のはずがコロナの影響で延期に。そして、今年2021年、まさに満を持して公開されました。最初にストレートな感想を書いておくと、めちゃくちゃ面白かったです。大満足の作品でした。ドラマ版「奥様は、取り扱い注意」をご存知ない方のために、ちょっとだけあらすじを。...
ンマヤ・ンマヤ・ンマヤ・ンマヤー 「孤独のグルメ」
- 2021/02/27
- 18:00

ドラマ「孤独のグルメ」に、ようやくハマっています。前々から「面白いですよ」と薦められていたのですがなかなか見る機会が無く。最近、ようやく見始めたのですが、これが相当面白い。松重豊さん扮する井之頭五郎が、決して有名ではない何処にでもある飲食店に入り、ひとりで料理を堪能するという形式で作られているドラマ。ただ、おじさんがひとりで御飯を食べているだけ。それだけです。シンプルです。でも、それが良い。とてつ...
水玉ワールドよ永遠に
- 2021/02/09
- 18:00

水玉螢之丞さんの本、「SFまで10000光年」と「SFまで10万光年以上」を読み終わりました。水玉先生は、2014年12月13日に55歳の若さで亡くなられています。SFが大好きな自称「いさましいちびのイラストレーター」である水玉先生は、知識と感性で好きなものを語るヲタクの鑑でした。前述の2冊には、1993年から2014年まで「SFマガジン」に連載されたエッセイを中心に、他誌のコミックエッセイや文庫カバーイラストなどがぎっしり詰め...